医局員募集

感染症専修医プログラム Keio Infectious Diseases Fellowship Program

1. プログラム概要

本プログラムは、「臨床×感染対策×研究×国際性」を柱に、日本感染症学会専門医の取得を目指すだけでなく、世界的に活躍できる感染症医の育成を目的としています。高度な診療能力と院内感染対策能力に加え、臨床研究・トランスレーショナル研究・医師主導治験を自ら企画・実施する力を養い、将来のリーダーとなる人材の輩出を目指します。

さらに、本プログラムでは、修士(公衆衛生学)(MPH)や博士号(PhD)取得を視野に入れたキャリアパスも用意しており、臨床と研究の双方で高い専門性を持つ人材の育成を支援しています。柔軟なキャリア支援により、感染症領域における多様な進路の実現が可能です。

2. プログラム年数

3年間
(MPH・PhDなどキャリアに応じて柔軟に調整可能)

3. 受け入れ対象

  • 基本領域の専門医を取得済み、または取得予定の医師
  • 内科サブスペシャリティを取得済みで、感染症専門医取得を目指す医師

現在、内科専門医と感染症専門医の連続取得コースも設立準備中です。

4. 指導体制

指導責任者 南宮 湖
指導医
  • 吉藤 歩
  • 宇野 俊介
  • 八木 一馬
  • 上蓑 義典(臨床検査科)
外部アドバイザー 臨床研究・公衆衛生・トランスレーショナル研究・国際保健分野の指導医が随時参加

5. カリキュラム構成(3つの柱)

A. 感染症専門診療の徹底習得(OJT+カンファレンス)

  • 感染症コンサルテーション(他科依頼多数)
  • 血液培養陽性例・無菌検体陽性例の精査・治療
  • 院内感染対策(ICT)、抗菌薬適正使用支援(AST)
  • HIV・結核・免疫不全患者の管理
  • ワクチン、性感染症、トラベルクリニック外来
  • 教育活動(学生・初期研修医・多職種)

達成すべきコンピテンシー

臓器横断的診療

①臓器横断的診療

全ての診療科からの相談に対応し、あらゆる臓器の診療を行います。診断の難しい患者さんに対しては、結果的に感染症でなかったとしても、診療の質の貢献を目指します。感染症を治療することだけが目標なのではなく、患者さん個人の最適なアウトカムを目標にすることを体得します。

臨床微生物学

②臨床微生物学

感染症は微生物が起こす疾患なので、微生物の理解は必要不可欠です。どのような微生物が原因なのか、同定方法とその不確実性、同定できない場合の手段、などを臨床的に重要な微生物学の知識を身につけます。検体の塗沫グラム染色の解釈などもこのコンピテンスに含まれます。慶應義塾大学病院臨床検査科とも連携した研修を行います。

薬物動態学

③薬物動態学

感染症治療薬には様々なものがあり、使い方には習熟が必要です。また、薬剤耐性菌を抑制するために適正な抗微生物薬の使用が望まれています。感染症治療薬の選択、様々な投与方法、副作用、相互作用、第一選択薬が使用できない場合の代替薬についての知識、など抗菌薬ソムリエとでも言えるべき知識・技能を身につけます。

感染症倫理

④感染症倫理

感染症の拡大防止に必要な隔離や、HIVや薬剤耐性菌保菌の告知など感染症において倫理的な問題は数多く存在します。隔離には人権の制限を伴うことや、過去に我が国ではハンセン病、HIV感染症をはじめとする感染症への偏見や差別があったことを歴史から学び、公衆衛生の視点と患者個人の人権という人の視点に立てる倫理観を養います。

新興・再興感染症対策

⑤新興・再興感染症対策

世界では、新型インフルエンザ、ジカウイルス感染症、COVID-19やM痘といった、様々な新興・再興感染症が生じます。世界での疫学情報を把握し、我が国、病院に必要な対策を考えます。また最新の医学情報にキャッチアップし、必要な文献を読みこなし、最適な治療法、感染対策を自身で考える能力を養います。

感染症危機管理

⑥感染症危機管理

感染症対策には、院内整備やサーベイランス、手指衛生やPPE使用の遵守などの平時に必要な対策に加え、患者隔離、積極的疫学調査、病棟閉鎖などのアウトブレイク時対応が必要です。病棟内、病院内アウトブレイク時のマスコミ対応なども含まれます。感染管理部門はほとんどの病院に設置されているが、感染管理において感染症専門医としての関わり方を学びます。

B. 臨床研究・トランスレーショナル研究

  • 臨床疫学研究(観察研究・前向きコホート・レジストリ研究)
  • 医師主導治験の立案・IRB申請・モニタリング実践
  • 多施設共同研究・国際共同研究への参画
  • ゲノム解析・多層オミクス解析(学内外の研究室と連携)

C. 多様なキャリア支援・国際展開

  1. MPHコース(慶應義塾大学大学院 健康マネジメント研究科と連携:夜間・土曜日を中心とした社会人コースあり)
  2. PhD進学希望者向けの研究専念トラックあり
  3. 東南アジアを中心とした感染症研究(フィールド調査、共同疫学研究、AMED連携プロジェクトなど)
  4. 海外留学・国際学会発表も積極支援

6. 週間スケジュール(例)

曜日 午前 午後
9:00 感染症コンサルテーション 研究活動
外来 感染症クリニック外来(外勤)
9:00 感染症コンサルテーション 臨床研究ミーティング / プロトコールレビュー
外来(ワクチン・渡航外来) 教育活動
9:00 感染症コンサルテーション 総合病院ICTラウンド(外勤)

7. 取得可能な資格・学位

  • 日本感染症学会専門医
  • 修士(公衆衛生学)(MPH)
  • 博士(医学)(PhD)

その他、各種感染症関連専門医が取得可能

  • 日本臨床微生物学会認定医
  • 抗菌化学療法認定医
  • 日本エイズ学会認定医
  • 結核・抗酸菌症認定医
  • インフェクションコントロールドクター(ICD)

8. キャリアパス

キャリアパス

9. 選考

  • 書類審査(履歴書・志望理由書)(書式自由)
  • 面接選考

10. 給与

慶應義塾大学医学部専修医研修センターの規定に準拠
※詳細はこちらをご参照ください。

11. 卒後の進路(想定例)

  • 大学病院・総合病院における感染症科責任者
  • 大学教員(研究専任 or 臨床研究指導者)
  • 海外のMPH/PhD取得後、グローバルキャリアへ
  • 感染症研究機関研究員
  • 国際機関職員

12. 特徴と強み

  • 高い臨床力を育む環境:
    慶應義塾大学病院は、難治症例や重症感染症のコンサルテーション依頼が非常に多く、感染症専門医としての診断力・判断力を実践的に磨くことができます。特に、血液培養陽性例のマネジメントを含めた血流感染症、免疫不全患者の感染症、多剤耐性菌の感染管理など、専門性の高い症例を多数経験できる環境です。感染症コンサルタントとして多職種と連携しながら、現場での感染制御・抗菌薬適正使用支援にも積極的に関わることで、臨床現場で即戦力となる力が身につきます。
  • 高い研究力と支援体制:
    これまで我々は、抗酸菌やCOVID-19やワクチンに関して、感染症の先端研究分野で多数のPhD研究者と連携し、実践的な臨床研究・トランスレーショナル研究を推進してきました。たとえば、患者検体を用いたフローサイトメトリー解析や、病原体のゲノム解析などを実施しており、"bedside to bench, bench to bedside" を実践する研究室一体型の研修を提供します。また、レセプトデータなどを使用した大規模データベース研究や、医療経済評価(費用対効果分析)といった、ドライラボの研究も実施しています。また、研究推進センターや生物統計チームと連携した充実のサポート体制のもと、論文執筆や研究費申請、国際学会発表まで包括的に支援します。“独立して道を切り拓ける力”のある感染症科医を育てます。
  • 強力な感染制御体制とチーム医療:
    専従薬剤師、感染症管理専門看護師3名、感染管理認定看護師1名を擁する感染制御部が中心となり、日本国内でも高水準の感染対策を実施しています。多職種が連携し、実践的なチーム医療の中で学べることも本プログラムの大きな魅力です。
  • 柔軟なプログラム設計:
    国内のさまざまな医療機関・大学と連携し、感染症分野におけるコンバイン研修プログラムを構築中です。個々のキャリアに応じた柔軟な研究プログラムの設計が可能です。
  • 国内外における感染症研究の展開とキャリアパス支援:
    当教室では近年、公的資金を活用しながら、国内にとどまらず海外のフィールドにおいても感染症研究を展開するという新たな取り組みを進めています。国際的なキャリアを志す方はもちろん、「海外で感染症研究を行いたいが、日本国内でのキャリアも継続させたい」と考える方にとっても、またとない機会とキャリアパスを提供できると考えています。海外でのフィールド研究プロジェクトの立ち上げを含め、さまざまなフェーズを経験することができ、ご自身の志向に応じたキャリア形成や多様な感染症研究への関わり方を、教室全体で全面的に支援します。

13. 問い合わせ先

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