教室の特色

慶應義塾大学医学部
感染症学教室の
ミッション

慶應義塾大学医学部感染症学教室は、基礎・臨床一体型教室であり、基礎医学から臨床医学までが一体となった学際的研究を行い、次世代の感染症医を育成するミッションを担います。

次世代の感染症医に
必要とされる要素

感染症学教室・臨床感染症センター

これからの感染症医に必要な要素は①臓器横断的診療、②微生物学、③薬物動態学、④感染症倫理、⑤新興・再興感染症対策、⑥感染症危機管理の6つの能力です。これらは、慶應義塾大学病院臨床感染症センターにおける研修のコアコピテンスとなっています。

感染症は目に見えない微生物が起こす、全身のあらゆる臓器に起こりえる疾患です。また、医学の進歩によって移植医療、免疫抑制治療、高度な侵襲を伴う治療などが実用化し、また航空機や移動手段の発達により地球上のどこにでもアクセスできるようになり、本来起こり得なかった感染症が発生し、瞬く間に拡大する可能性があります。また質量分析装置や遺伝子検査などの進歩に伴い、これまで耳にしたことがない微生物が感染症を起こすことがわかってきました。さらに、抗菌薬の濫用によって、薬剤耐性の問題が世界規模で立ちはだかっています。そのため、原因となる微生物の知識、感染する宿主の知識、および抗微生物薬や宿主免疫を介する治療薬の知識を駆使し、原因微生物と感染宿主と治療薬の関連を踏まえて、個別に最適な治療を行う必要があります。それらの知識に加えて、最新のエビデンスを網羅し、豊富な経験を積み、臓器横断的に診療できる感染症医が求められています。

また、2000年に入ってからも、新型コロナウイルス感染症、サル痘(mpox)、ジカウイルス感染症、エボラ出血熱、新型インフルエンザなど、パンデミックあるいはWHOのPHEIC(国際的に懸念される感染症)に指定される感染症が相次いて発生しています。世界的規模で寄生虫疾患を制圧してきた熱帯医学・寄生虫学教室の歴史的偉業を受け継ぎ、国際的視点や、疫学的視点を持っていつどこで発生するか予想がつかない新興・再興感染症に備える必要があります。また、感染症の拡大を防ぐには、治療とともに予防も重要です。院内での感染対策や、アウトブレイク対応などの感染症の危機管理を担う必要があります。

また、我が国ではハンセン病、HIV感染症を始めとする感染症への偏見や差別がありました。これらの事実を歴史から学び、感染症診療だけでなく、公衆衛生の視点および人権・倫理的な視点を養う必要があります。

当教室では、これらの要素をコアコピテンスとして、人や社会、行政と関わり、様々な研究者と関わりながら、国際的、学際的視点で問題解決してまいります。これには医師のみならず、様々な医療スタッフ、行政機関、も含めたチームで取り組むことが不可欠です。慶應義塾大学医学部感染症学教室は、慶應義塾大学病院の臨床感染症センター、感染制御部の使命も担いながら、リサーチマインドを併せ持つ、感染症に関わる様々な人材を育成して参ります。