教授ごあいさつ

慶應義塾大学医学部 教授 長谷川 直樹

慶應義塾大学医学部
教授 長谷川 直樹

2019年5月より感染症学教室の教授を拝命いたしました。当研究室は寄生虫学・熱帯医学を扱う教室として発足しましたが、時代の変遷とともに対象を熱帯医学に限らず、2013年4月より広く感染症全般を対象とする感染症学教室となりました。 扱う病原微生物、感染症の幅を広げ、多くの学内外の部門と共同し、微生物やホスト要因の解析にも新たな技術を取り入れて、診断・治療・予防法の開発を進めております。また感染症学教室に所属する教室員の多くは、病院 感染制御部を兼任しています。感染制御部は1998年に感染対策室として発足し、2010年4月に感染制御センターに、さらに2019年5月に現在の感染制御部となり、医師、看護師、臨床検査技師、薬剤師、医師事務職から構成される感染制御チームで活動をしています。さらに2022年10月 には感染症に関する診療部門として、病院に臨床感染症センターが設置され、感染症学教室に所属する医師が所属して感染症外来にて診療を担当しています。感染症学教室と感染制御部、臨床感染症センターは基礎、臨床の融合一体化を目指し、臨床検査室の微生物検査部門、薬剤部と密接に連携しながら、感染症診療、診療支援、病院感染制御、卒前・卒後教育、研究を4つの柱として活動しています。特に研究では臨床おける疑問を研究のテーマにし、その成果を実臨床で活かすことも大切にしています。

2020年には、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが発生しましたが、21世紀になっても、SARS、新型インフルエンザ、MERS、SFTS、ジカ熱、エボラ病、そして最近ではエムポックス(サル痘)など、世界を揺るがす新興・再興感染症が相次いで出現しました。特に今回のCOVID-19は感染症の恐ろしさや難しさとともに、瞬く間に原因が究明され、短時間で薬剤やワクチンの開発・実用化にまで至る科学技術の著しい進歩も認識することができました。

感染症領域は21世紀に入り、新興感染症の発生とともに、感染対策・制御の重要性がますます重視されるようになり、疫学、診断、治療、予防、感染対策・制御を含めて総合的に捉える必要があります。現在、最も注目される領域の一つになりましたが、対象・守備範囲が広いため、実際にはまだまだ人材が不足しています。今後は感染症に興味のある方、感染症や感染制御の臨床、研究に携わってみたい、と思う方々の受け皿になり、感染症専門医の育成や我々の教室の特徴を活かした感染症・感染制御に関する研究を共に進めてゆければ幸いです。
ぜひホームページをご覧ください。