研究概要
末期腎不全にて慢性透析療法を受けている患者数は2020年末の統計で347,671人です。透析患者の合併症として感染症は死亡原因の21.5%を占め、死亡原因の第2位です。透析患者は好中球、単球、マクロファージなどの食細胞機能低下、Tリンパ球やBリンパ球などの異常により免疫不全の状態となり、食事制限による低栄養状態、貧血、代謝性アシドーシス、原疾患としての糖尿病、免疫抑制剤の使用、皮膚バリアの障害、透析膜による白血球や補体の機能低下などの要因により、感染をきたし、重症化しやすいといわれています。
感染による重症化を防ぐために、能動免疫を誘導する予防接種は非常に重要です。しかし、透析患者におけるインフルエンザワクチン接種後のセロコンバージョン率は30%から80%、B型肝炎ウイルスワクチンでは、健常人が、ワクチン接種者の90~95%に抗体産生がみられるのに対して、透析患者では50~60%に過ぎず、抗体も急速に低下するといわれています。
そこで、我々は臨床医の視点から、透析患者におけるワクチンの免疫応答について検討し、透析患者の免疫の特徴を明らかにし、透析患者が感染にかかりにくくするためにできることを模索するため、慶應義塾大学微生物免疫学教室、北里大学ウイルス感染制御学教室、チューリヒ大学生理学・免疫学教室との共同研究をすすめながら、研究を行なっています。
現在、新型コロナウイルスワクチン、インフルエンザワクチン、帯状疱疹ウイルスワクチンなどのワクチンの応答について研究しています。
主な研究成果
- Mise-Omata S, Ikeda M, Takeshita M, Uwamino Y, Wakui M, Arai T, Yoshifuji A, et al. Memory B Cells and Memory T Cells Induced by SARS-CoV-2 Booster Vaccination or Infection Show Different Dynamics and Responsiveness to the Omicron Variant. J Immunol. 2022 Dec 1;209(11):2104-2113.
- Yoshifuji A, Toda M, Ryuzaki M, et al. T-cell Response and Antibody Production by Booster COVID-19 Vaccination in Japanese Patients with Chronic Kidney Disease Treated with Hemodialysis. Preprints 2022, 2022090101 (doi: 10.20944/preprints202209.0101.v1).
- Yoshifuji A, Toda M, Ryuzaki M, et al. Investigation for the efficacy of COVID-19 vaccine in Japanese CKD patients treated with hemodialysis. Ren Replace Ther. 2022;8(1):39.